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『浅草若手芸人』

 先日、友達に会うためだけに東京に行ってきた。私には現在三人しか友達がいない(友達募集中)。一人は高校時代の同級生、あとの二人は大学の同級生で、いずれも名古屋在住でないため誰と会っても久しぶりの再会となる。

 前日に高校の友人と新橋で飲んだくれ、今夜は六時半から両国で大学の友人と会うのだが、朝十時にホテルを追い出された私の足は、勝手に浅草を目指してしまうのである。酒呑みの足は胸を張って朝酒ができるところをよく知っているのだ。混み合っている仲見世を避け二本隣の筋を伝法院通りに進むと、若者が一枚のチラシを渡してきた。

「お笑いライブやってます!」

 朝酒した後、浅草演芸ホールに行こうと思っていたが、演芸ホールの開演までまだ間があったので、『世界で一番小さな劇場』という浅草リトルシアターで若手芸人の漫才漫談コントを見てみることににした。

 三十分間の間に十組が出演するという過密な講演である。口跡が良く有望そうな者もいたが、如何せんネタが酷いのやら、間が悪いのやら、全く面白くない。お客さんはたった四人で、私以外の客は三人とも若い女性でほとんどサクラっぽい。

 ある芸人は、相方が休みとかで急遽ピンで漫談したが、思いっきりネタをすっ転んでおいて、客の私をいじってきた

芸人「おとうさん、どうでしたか?」

私 「だれがおとうさんやねん!こらっ。お前の父さんちゃうわ!」

芸人「お兄さん、どうでしたか?」

私 「どうもこうもないわ、にいちゃん、落ちはどこいったん?」

芸人「ありません……(泣)」」

と言った途端に舞台は暗転した。